2006年 日本睡眠学会学術集会 発表 抄録
睡眠障害に対する整形外科的アプローチ
-睡眠時無呼吸症候群に対する枕調節の試み-



【はじめに】
睡眠時無呼吸症候群(以下SAS)の治療法は、中等~重症例に対する経鼻的持続陽圧呼吸法、軽症例には耳鼻科的手術療法、マウスピース、体重コントロール等があるが治療法の選択肢は少ない。当院では整形外科的な頚椎症状に対し枕の調節法を用いて治療を行ってきたが、本法によりSASを合併例に改善例が見られたため、SASの治療の有用性に関する研究を開始した。その試みについて発表する。

【方法】
整形外科的な枕調節法とは、寝返りを促す仰臥位および側臥位における枕の高さ、硬さを厳密に調節する。これまでに日整会治療成績判定基準改変Pillow Scoreを用いた我々の研究で、適切な仰臥位頚椎傾斜角は15度前後であり、これを指標に疾患ごとに調節を行う。終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)で、調節した枕と調節していない市販の枕の2種類をスプリットナイトでモニタリングし、以下を観察した。1)2003.11.~2004.2.にFirst Night施行した8例、女性3例男性5例、平均年齢41.2歳において、各体位における睡眠時間および仰臥位におけるAHIを観察した。2)2004.11.~2005.10.First Night施行した15例、女性2例男性13例、平均年齢42歳において、AHI、最低SaO2、Stage変化を観察した。

【結果】
1.8例中6例(80%)において仰臥位睡眠時間が延長しており、8例の平均仰臥位時間は、不適切な枕において81.2分、適切な枕で164.4分であった。また8例中5例(83.3%)が仰臥位におけるAHIの減少が見られた。2.15例中、AHIは10例(66.7%)に減少を認めた。最低SaO2は9例(60%)に増加を認めた。Stage変化は、9例(60%)はstage1が減少しstage2が増加した。Stage2が増加したがstage3が減少した例も2例見られた。

【考察】
今回の研究では、整形外科的な枕調節法を用いることで、仰臥位においても無呼吸が起こりにくい傾向があることが示唆された。また、AHI、最低SaO2、Stage変化においても適切な枕調節が好影響を与えると考えられた。