2005年 第78回日本整形外科学会学術総会 発表 抄録
関節リウマチの睡眠障害と枕の高さ調節による頚部症状改善の評価
Improvement of sleep disturbance caused by cervical symptoms of rheumatoid arthritis using the adjusted pillow.

山田朱織1)、古府照男2)、勝呂徹3)


【目的】
関節リウマチ(以下RA)患者の睡眠障害を調査した。頚椎病変を有するRAにおいて、今回我々は一定の基準を用い高さを調節した枕を考案し、画像的評価と臨床症状の改善度について検討した。

【対象および方法】
対象は頚椎病変を有するRA20例、全例女性、年齢は31 ~81 歳平均60.6歳。枕の調節法は側臥位において頭部と体幹の中心線が臥床面に水平になり、同時に仰臥位で頚椎が臥床面に対し5 度前後前傾とする。適切な高さを決定し、レントゲンで頚椎側面像を撮影し、環軸椎亜脱臼および中下位頚椎アライメントを確認した。頚部症状について日整会腰痛治療成績判定基準を改変(以下MJOAs),Visual Analog Scale (以下VAS),Face Scale(以下FS)を試行した。

【結果】
20例中10例(50%)が、睡眠中の疼痛ほか夜間症状等を訴えていた。寝具の不適合が症状の原因と自覚しているもの5例(25%)あった。症状は首のこわばり17例(85%)、頚部痛15例(75%)、肩および肩周囲の痛み(70%)、寝返りのしにくさ13例(65%)、頭痛11例(55%)、不眠感10例(50%)であった。MJOAs は使用前平均18.5点が使用後平均27点(P<0.005)、改善率は45.9%であった。自覚所見4.9点から6.1点(P<0.01)改善率28.6%、他覚所見3.7点から4.7 点(P<0.05)改善率15.8%、ADL6.8点から11.5点(P<0.01)改善率50.9%、満足度0.7点から1.6点(P<0.05)改善率68.4 %であった。VASは4.5から3.1(P<0.01)、FSは10.1から6.4(P<0.001)と有意に改善していた。

【考察】
今回我々は、中下位頚椎のアライメントを重視して睡眠中の頚椎の状態を決定する枕の高さ調節法を考案した。同時に環軸椎亜脱臼も評価したが、ADIが開大する条件は枕の高さではなく顎のポジション(nodding)による影響が大きいと考えられた。MJOAsで、頚部症状の自覚および他覚所見の有意な改善をみたが、特にADLの改善度が高かった。客観的な基準をもった枕の調節法を確立する事は、頚部症状を有するRAの睡眠障害の改善において有用と思われた。

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成瀬整形外科1)、東邦大附属佐倉病院整形2)、東邦大整形3)