2004年 第77回日本整形外科学会学術総会 発表 抄録
トップレベルのラグビー選手における
枕の高さ調節による頚部症状改善の評価


山田朱織1)、山口泰成2)、熊谷日出丸1)

【目的】
睡眠中使用する枕において、適切な個々への適応基準は未だ確立されていない。今回我々は一定の基準を用い高さを調節した枕を考案した。頚部症状を有するラグビー選手の症状改善度を検討したので報告する。

【対象および方法】
対象はトップレベルのラグビー選手(ヤマハ発動機)19 例、全例男性、年齢は22 ~39 歳平均28.4歳うち16 例(84.2% )は頚椎疾患または頚部スポーツ外傷歴があった。本調節法に基づき各選手の体格に適合する枕を作製し、A 群:短期使用群(3 週間)7 例、B 群:中期使用群(6 週間)12 例の症状改善度を評価した。枕の調節法は、側臥位において頭部と体幹の中心線が臥床面に水平になり、同時に仰臥位で頚椎が臥床面に対し5~10 度前傾となるものである。枕の素材はウレタンとフェルトでへたりによる高さ変化を防止した。頚部症状は日整会腰痛治療成績判定基準を一部改変(以下MJOAs )して評価し、自覚症状9 点、他覚所見10 点、日常生活動作(以下ADL)16 点、満足度3 点の4 項目総合38 点満点とした。

【結果】
MJOAs は全例で使用前平均21.9 点が使用後平均29.1 点(T-testP<0.0001)、改善率は44.7%であった。使用期間で比較すると、A 群は22 点から27.3 点(P<0.05)改善率33%、B 群は21.8 点から30.3 点(P<0.001)改善率52.5%であった。項目では、他覚所見5.9 点から7.5 点(P<0.01)改善率34.1%、ADL9.8 点から12.2 点(P<0.01)改善率38.7%、満足度0.2 点から1.7 点(P<0.001)改善率53.6 %であった。

【考察】
客観的な枕の調節法を用いて、トップレベルのラグビー選手の頚部症状が改善する事が明らかになった。リーグ中の外傷もあって自覚症状改善は優位ではなかったが、他覚所見及びADL 症状の改善は有意であった。満足度の改善率は有意に高値を示した。短期より中期成績の改善率が高い事は、使用を継続する有用性を示唆する。客観的な基準をもった枕の調節法を確立する事は、頚部症状の改善
において有用と思われた。

成瀬整形外科1)、森の里病院リハビリテーション科2)