2015年4月17日(金) 第44回日本脊椎脊髄病学会学術集会

第44回日本脊椎脊髄病学会学術集会
至適枕の使用により頸椎症状が改善した症例のMRI画像解析

2015年4月17日(金)
第44回日本脊椎脊髄病学会学術集会
場所:福岡国際会議場

至適枕の使用により頸椎症状が改善した症例のMRI画像解析 ―頸椎アライメントと病変部クモ膜下腔の観察― 山田 朱織(16号整形外科),星 徹(東京工科大学),勝呂 徹(東京医科大学医学総合研究所)

【目的】我々は就寝中に使用する枕を個人の体格等に適合するように調節し頸椎症状改善の効果を検証してきた。今回は有効性メカニズムを検討するために、MRIで至適枕使用時の頸椎アライメントおよび病変部クモ膜下腔を定量的に評価した。

【対象】2008~2013年に頚椎症状を訴え来院した患者で、頚椎MRIを撮影した 2757例から無作為に抽出した410例、男195例、女215例、14~93歳平均年齢50.5歳であった。

【方法】枕はSSS法で仰側臥位を調節し、最もスムーズな寝返りとなる高さを至適枕とする。至適枕使用時の仰臥位MRIのT2強調像を撮影した。頸椎アライメントは仰臥位頸椎傾斜角を計測し、頸髄の評価はA:枕無とB:至適枕の2条件における病変部のクモ膜下腔前後径を計測し比較した。

【結果】仰臥位頸椎傾斜角(度)は全体平均18.1、男18.1女18.1、年代別では17.1~18.9、疾患別では変形性頚椎症、頚椎椎間板変性症、頚椎椎間板ヘルニア(CDH)、頚部脊柱管狭窄症(CSCS)等で17.8-19.2となり、有意差を認めなかった。次に各高位のクモ膜下腔前後径(mm)を計測した。各高位に病変部を認めたのはC2/3は44例,3/4は211例,4/5は310例,5/6は375例,6/7は342例であった。各高位の前後径の平均値A/Bは8.98/9.16,9.19/9.41,9.17/9.55,8.84/9.34,9.19/9.64で、全てBで有意に増加した。男女の前後径に差はなく、男女ともBで優位に増加した。年代別では20代のC3/4、30代のC3/4,70代のC2/3を除く全てBで有意に増加した。疾患別で特徴的なのはCDH、CSCSとも最狭窄部C5/6において最大の増大0.54mm、0.41mmを認めた。

【考察】至適枕を使用すると仰臥位頸椎傾斜角が個体差によらず約18.1度となり、同時に病変部のクモ 膜下腔の有意な増大を認めたことより、臥位における良肢位とよべる頸椎姿勢の存在が示唆された。こ の姿勢により就寝中の頸椎および頸髄の安静が保たれることが頸椎症状改善のメカニズムの1つと考え られた。