2010.05.29  第83回日本整形外科学会学術総会 オーラル発表
枕調節の意義を寝返りの4D解析から考える―仮想体軸の可視化―
Significance of Hight Ajdusted Pillow Applying 4D Motion Analysis of
Turn Over State in Bed
- Visualization of the Spinal Body Axis -
16号整形外科 山田朱織


 我々は枕の調節法(SSS法)を用いて9,000人の至適枕の高さ(以下、枕高)を決定し、睡眠姿勢を静的姿勢と動的姿勢すなわち寝返りを確認してきた。今回、静的姿勢に影響を与える要素である人体計測値(身長、体重、肩幅)と枕高の相関を検討した。一方動的姿勢の評価は寝返りをモーションキャプチャで4D(3次元+時間)解析し、最小エネルギーで行う寝返りの仮想体軸を可視化した。

【対象と方法】
 SSS法で計測した309例(男性94例、女性215例)、年齢は24~81歳を対象とし、身長、体重、肩幅と枕高の相関を調べた。次に頭、肩、骨盤に各4個の光学式マーカーを装着し、寝返りを4DモーションキャプチャーシステムVicon8(光学式赤色光カメラ18台)で毎秒120フレームの速度で、条件ごとに約40秒間ずつ撮影した。枕は至適枕、低枕、高枕の3条件とした。頭肩骨盤の中心を通る体軸を仮想し、CGソフトMotionBuilder 7.5と3ds Max 2008(Autodesk社)で可視化し解析した。

【結果】
 相関係数は、男性で身長と体重0.533、体重と肩幅0.552、身長と肩幅0.375、枕高と身長0.577、枕高と体重0.616、枕高と肩幅0.559となった。女性は0.484、0.595、0.462、0.482、0.683、0.527となった。男女とも身長、体重、肩幅と枕高が相関し、特に体重と高い相関がみられた。
 4D解析の結果、至適枕の寝返りで仮想体軸がほぼ直線状になる点が確認された。低枕、高枕では仮想体軸は非直線状となり、前者では骨盤が仮想体軸の上方に逸脱し、後者では下方に逸脱した。

【考察】
 静的姿勢に影響を与える身体各部の相関が分かった。更に、動的姿勢を可視化することで、仮想体軸を逸脱する骨盤の動きが確認された。寝返り動作の駆動力は骨盤から引き起こされると考えると、肩と骨盤の中心点を結ぶ延長線上に頭の回転中心があれば、全身の仮想体軸が直線となり、最小エネルギーで寝返り可能になると考えられた。この頭のポジショニングを行うのが枕調節の意義である。

<要約>枕の調節法(SSS法)は、至適枕の高さを決定し、静的および動的睡眠姿勢すなわち寝返りを確認する。今回、静的姿勢に影響を与える要素である身長、体重、肩幅と枕高の相関を検討した。動的姿勢の評価は寝返りをモーションキャプチャで4D(3次元+時間)解析し、寝返りの仮想体軸を可視化した。全身の仮想体軸が直線となるとき、最小エネルギーで寝返り可能になると考えられた。この頭のポジショニングを行うのが枕調節の意義である。