2009.10.25  第6回アジア睡眠学会・日本睡眠学会第34回定期学術集会 演題抄録
枕の人間工学―整形外科的解析―

睡眠中使用する枕を、人間工学Human Factorsの立場で小原らは体具と呼ぶ。体具とは、体に接し支持する道具である。人間工学の方法論の基礎は人体計測である。我々は、当院で考案した枕の計測法を用いて約7,000人の至適枕の高さ(以下、枕高)を計測し、頚部臨床症状の改善やMRI画像における脊柱管の拡大を証明してきた。今回無作為に抽出した309人の人体計測と枕高の相関につき検討した。

【対象と方法】
2009年に枕高をSSS法で計測した309例(男性94例、女性215例)、年齢は男性24~76歳、女性は25~81歳を対象とし、身長、体重、肩幅、枕高を計測した。

【結果】
男性は、身長156~186cm平均171.0cm、体重50~115Kg平均69.2Kg、肩幅39~50.5cm平均44.8cm、枕高は5.0~9.0cm平均7.2cmであった。女性は、身長140~175cm平均156.4cm、体重32~90Kg平均51.9Kg、肩幅34.5~46cm平均39.4cm、枕高は4.5~6.5cm平均5.5cmであった。
相関係数は、男性は身長と体重0.533、体重と肩幅0.552、身長と肩幅0.375、枕高と身長0.577、枕高と体重0.616、枕高と肩幅0.559となった。女性は0.484、0.595、0.462、0.482、0.683、0.527となった。
身長、体重、肩幅の各々に中等度の相関がみられ、中でも女性における体重と肩幅の相関はやや大きく、男性における身長と肩幅の相関は小さい傾向となった。男女とも、身長、体重、肩幅が増加すると枕高も増加するが、特に枕高と体重に高い相関がみられた。

【考察】
人間の睡眠姿勢の評価は、静的状態と動的状態を考慮しなければならない。前者は今回の人体計測から、体格を構成する各要素と枕高に相関があることが示唆された。後者については、より複雑な寝返り動作を解析する必要がある。
今後も症例を重ね、日本人の骨格や体系的特徴を反映した枕のプロトタイプを作成すると同時に、その限界を見極め、個体差や疾患別の特殊条件の位置付けを確立することが重要と考える。