2009.10.11  第12回日本アロマセラピー学会学術総会 演題抄録
不眠症の整形外科治療ー睡眠姿勢の指導とアロマセラピー
16号整形外科 山田朱織


21世紀は日本人の5人に1人、21.4%は不眠症といわれます(厚生労働省調べ)。整形外科臨床の立場から不眠症に対し2つの治療法を応用しています。1つは睡眠姿勢の徹底指導、もう一つはアロマセラピーです。基本的な考え方、使用精油、使用方法、効果等について述べます。
不眠症とは、様々な原因で眠れないために社会生活が障害されるもので、入眠障害、中途覚醒、早朝覚醒、熟睡障害の4つの型に分類されます。週2回以上、1か月以上続いている状態と定義されます。不眠症の原因は精神心理的な要因と考えられがちですが、それだけではありません。大別すると、精神心理的不眠と、身体的不眠、その他の不眠があります。原因別に治療を考えます。
原発性不眠症(神経性不眠症)は、入眠障害が多く不眠を避けようと過度の不安や恐怖によってさらに睡眠障害が増悪します。本症に対する治療は非薬物療法と薬物療法があり、前者にアロマセラピーが位置付けられます。
次に身体疾患による不眠症で、呼吸器系、心血管系、消化器系、筋骨格系疾患の一症状として不眠が発現します。各々の原因疾患に対し、代替医療のアロマセラピーを適応することは、2次的に生じる不眠症の治療になります。整形外科領域で最も多いのは、不適切な睡眠姿勢によって起こる不眠です。睡眠姿勢は身体を預ける寝具つまり枕と敷物で約8割の条件が決定します。脊椎動物である人間は、個々の体格、体形、疾患などを考慮し、最小エネルギーで寝返りが可能となるよう寝具を調整すると、日中に疲労した脊椎および神経、筋肉、関節等を回復できます。逆に不適切な睡眠姿勢は、これらの回復を阻害するばかりでなく、痛みやしびれ、筋肉の緊張(凝り、張り感)を惹起します。枕の調整法Sleep Spine Set-up(SSS)法を用 いて睡眠姿勢を整え、その臨床効果を検証します。更にアロマセラピーの併用療法として、就寝前に筋骨格系の痛みやしびれで睡眠が障害されるときは、対症的に有効な精油を選択し、患部へのマッサージも効果がみられます。
最後に精神疾患による不眠症についてのアロマセラピー応用の注意です。気分障害(うつ病)や不安障害(パニック障害、心的外傷後ストレス障害)にアロマセラピーを応用する場合は、専門医つまり精神科医や心療内科医により総合的な治療計画に基づくべきです。睡眠薬を減量、中止する目的で導入したアロマセラピーに依存する例もあり、適応の限界を知って施行し、自殺企図のあるうつ病には用いるべきでないと認識する必要があります。
身体的不眠の背景に心理的社会的な要因が複雑に関与することもあり、これらを包括した治療計画こそが、西洋医学を補完代替するアロマセラピーの位置付けと考えます。